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ハイカーズ・コラム

Vol.2 ある、さもしいハイカーの告白

To これから歩くハイカーへ

HIKER TO HIKER、ひと月空きましたが、第二回目は名取トレイルセンター センター長の板谷が担当いたします。第一回の長谷川師匠の素敵なお話の後で、少し緊張しながら書いております。


長谷川さんの記事を読んで、自分がみちのく潮風トレイル(以下MCT)をスルーハイクした時の記憶が蘇りました。自分がハイカーとして親切にしてもらえるのは過去に歩いている先輩のおかげであると、階上町の地元の方がハイカーとの想い出を楽しそうに話してくれた時にふと気づいたことがありました。まだまだ歩く人が少ない2019年でしたが、直接は会ったことがない先輩ハイカーのジェントルな立ち振る舞いのおかげで僕もその恩恵を受けている、僕も後に歩く人のためにもちゃんとしなければ、と師匠が言っていたように背筋が伸びる気がしたものです。

スルーハイクを北からスタートして南下していたので、歩き始めて割りとすぐの階上町でそのような気づきを得ることが出来たわけですが、その後ずっとジェントルで謙虚なハイカーとして振る舞えたかというと全くそんなことはありません。階上町の記憶とともに、今考えても赤面するような記憶も一緒に蘇ってしまいました。

恥を偲んでその中の一つをここで告白し、反面教師的に皆さまに「こんなハイカーになってほしい(ならないでほしい)」という僕の気持ちをお伝え出来ればと思います。


北から歩き始めて一週間ほど経った頃、普代村のくろさき荘の前で北上しているスルーハイカー(今も親交が続いている南三陸在住のハイカーTです)に出会うことが出来ました。すぐに意気投合して、まだ昼前でしたがその日のハイキングを二人で早々に終了、くろさき荘に泊まることにして、お風呂に入ってビールを飲んで語り合いました。

彼は既に南から900km近く歩いてきていますが、僕はまだ北から140kmほどしか歩いていない、よちよち歩きのひよっ子ハイカーです。お互いのこれまでの行程、これからの予定、また、来し方行く末を話す中で、情報交換で各地の「トレイルエンジェル」(確か既にこの言葉を使っていたと思います)も話題にあがりました。ある町のお店の店主がハイカーを応援してくれていて、買ったもの以上にいろいろな物をくださったという話もその中にありました。「バックパックに入らないくらいラーメンやお菓子や飲み物をもらってしまった」その話が強烈に印象に残ってなんだかとても羨ましくて、その町に行ったら絶対に訪問しようと変に心に決めたことを覚えています。

何日か後に、ついにその町に到着しました。

話題にあがったお店にたどり着き、わくわくどきどきしながらお店に入りました。が、誰もいませんでした。奥に向かって「すみませーん」と声をかけても誰も出てきません。不在のようです。もちろん何かを買う予定ではありましたが、恥ずかしながら、もらえることの方を期待していたのは事実です。

いろいろ楽しみにしていただけに、予想しなかった事態に困惑して一度外に出ました。少しだけ不運だと思いました。

店主が外出しているのであれば少し待とうと周囲をうろうろしましたが、「戻ってきた時にハイカーだと気づいてもらわなくちゃ」と、そんな下心でバックパックを背負い直したりしました。

そんな風にその辺りを行ったり来たりしている時、もう一人の僕が「おまえは一体なにをしているんだ??」と問いかけてきました。ふと急に自分のさもしさに気づいてびっくりしました。店主に会ってお話し出来ることよりも、完全になにかをもらえることの方に気持ちが行っていることにも驚愕しました。猫には申し訳ないけど「まるで野良猫じゃないか」と、物欲しさにお店に周囲をうろうろしている自分が悲しくなりました。

あまりの自分のさもしさにショックを受けてしばらく立ちすくみましたが、やがて我に返りました。店主に会うことを諦めて、歩きはじめながら考えました。このさもしい事件以前にも、僕はトレイルエンジェルに出会えることをどこかで期待しながら歩いていたことに思い当たりました。今にして思うと、何か、誰かに特別扱いしてほしかったのかもしれません。そして、誰かの経験を自分も追体験することを何かの正解のように思っていたのかもしれません。



この一件以来、きっぱりとそんな期待をやめ、また”正解”を意識することもやめました。

みちのく潮風トレイルは人との交流を楽しめるトレイル、とよく表現することがありますが、出会いがないから失敗とかではもちろんなく、また誰かの体験を自分が体験出来ないことが不正解でもありません。“HIKE YOUR OWN HIKE”という言葉がありますが、人それぞれのハイキングの体験があり、誰かと比較して優劣を感じる必要もなく、自分のスタイルで楽しめば良い。そして、僕のようにさもしく物を欲しがるハイカーはいないとは思いますが、トレイルエンジェル、トレイルマジックが当たり前ではないし、ましてや自分で求めにいくものでもない。

恥ずかしい告白と結論がいまひとつすっきりとは繋がりませんが、MCTを歩くハイカーのみなさんには、ジェントルで、気持ちが良い謙虚なハイカーでいてほしいです。
そういうハイカーには、それぞれが求める楽しい旅がきっと待っていることと僕は信じていますし、そんなお話を名取トレイルセンターでお聴きできることを楽しみにしています。 HAPPY TRAILS!

From 板谷 学

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